技術士で独立して年商3000万円|10年続けた現実

技術士で独立して年商3000万円の現実

こんにちは、ガブです。

僕は建設コンサルの技術者として独立して10年になります。専門は、橋の補修設計です。

実績としては、

  • 社員ゼロ・事務所ゼロ・営業ゼロ・残業ゼロ
  • 独立10年、年商3,000万円を安定
  • 業界歴24年(会社員14年+独立10年)
  • 29歳で国家資格の技術士

という働き方で、平日の昼にボートを出したり、子どもの長期休みに合わせて何週間も旅に出たりしています。

いまは、同じように独立を考えている技術者に向けて、自分の体験を書いています。


「技術士を取ったら、独立して食べていけるのかな」

会社員として現場や設計をこなしていると、一度はそう考えたことがあるんじゃないでしょうか。僕もまったく同じでした。29歳で最初の技術士に受かったときも、「まあ自分にはまだ独立なんて無理だろうな」とずっと思っていたんです。

独立したのは38歳、会社員として14年働いたあとでした。いまは一人社長として年商3,000万円の規模を10年間続けています。

ただ、最初から順調だったわけではありません。一人で始めるのが怖くて先輩と二人で会社を作って失敗したり、独立直後に営業回りで取った最初の1本が一番つらい地雷案件だったりと、かなり遠回りもしてきました。

たとえば昨年、ある元請けのお客さんから、橋長20mほどの橋梁詳細設計を一式で請け負ったことがあります。諸経費まで含めた金額はおよそ440万円で、そのお客さんに了承していただけました。

もちろん、この金額は相手の会社の事情やお付き合いの深さによるものですから、どこの会社でも同じ金額が通るわけではありません。ただ、こういう仕事を年に2本から3本しっかり納めることができれば、それだけで年商1,000万円を超えるラインには届きます。上部や下部の内訳は、後半で出します。

この記事では、僕が独立して10年間やってきて見えてきたリアルな数字や業界の構造、そして独立してもうまくいかなかった人たちの共通点について、正直に書いてみたいと思います。誰にでも無責任に独立を勧めるつもりはありませんので、自分の立ち位置を確かめる材料として読んでもらえれば嬉しいです。

ガブの歩み。技術士取得から独立、現在までの軌跡
目次

「独立技術士の7割は売上100万円以下」の数字のウラ側

「技術士 独立」とネットで検索すると、必ずと言っていいほど出てくる有名なデータがあります。日本技術士会の千葉県支部が講座案内の中で紹介している、平成25年2月実施のアンケート調査です。

日本技術士会の調査(平成25年2月実施)によると独立技術士の7割は年間の売り上げが100万円以下、300万円以上はわずかに6%しかいません。
(出典:日本技術士会 千葉県支部「第55回CPD『技術士独立特別講座』のご案内」)

これを見ると、「技術士って最高峰の国家資格なのに、独立しても全然稼げないのか……」と不安になりますよね。

ただ、この数字には知っておくべき前提が2つあります。1つは、もう10年以上前の古い調査で、建設部門だけでなくあらゆる部門の技術士が混ざっているという点です。

そしてもう1つ、こちらの方が重要なのですが、同じ時期のアンケート調査報告書を見ると、回答者の72%が主な収入源を「年金+受託収入」と答えているんです。つまり、定年まで勤め上げた大先輩たちが、年金をもらいながら無理のないペースで個人事務所を開いているケースが、母集団の大多数を占めています。

だから「現役バリバリの技術者が独立しても7割が食えない」という意味ではまったくありません。

独立技術士の7割が売上100万円以下という調査の読み方

建設部門には、元請けの「外注枠」がある

特に僕たちがいる建設コンサルの世界は、他業種と比べても少し特殊です。元請け会社が受注した公共業務には、必ずといっていいほど「外に出すための外注枠」が存在しているからです。

元請けによって基準は違いますが、僕の感覚では受注額のおよそ3割あたりが外注費の上限の目安になります。ということは、元請け時代にあなたが自分の手でこなしていた年間業務量の「およそ3割」が、独立したときにそのまま下請けとして入ってくる売上の目安になります。

たとえば、会社員時代に年間7,000万円の業務を自分の手で回していた人なら、その3割が外注枠として戻ってくるイメージです。7,000万円のおよそ3割なので、年商およそ2,100万円の計算になります。

もうひとつ、会社員のうちに知っておいてほしいお金の構造があります。僕自身、会社員時代は年間で6,000万円から7,000万円くらいの業務を回していましたが、もらっていた年収は600万〜700万円ほどでした。つまり、自分が生み出した売上のざっくり10分の1くらいしか給料として受け取っていなかった計算になります。

会社の利益や管理費、間接部門の人件費が引かれるので組織としては当然なのですが、独立して収入が増えるのは、技術力が突然跳ね上がるからではありません。外注費を丸ごと受け取るポジションに自分の身を移すからです。

ただし、「外注枠があるから誰でも簡単に稼げる」わけではありません。元請けの外注枠というのは、資格を持っている人に機械的に配られるものではなく、「あの人に投げておけば間違いない」と信用されている手元にしか絶対に回ってこないからです。

技術士を持っていても「計算と図面」を外注している人は危ない

以前、同業の下請け仲間からこんな相談を受けたことがありました。

「元請けにいる知り合いが独立したがっているんだけど、ガブさんはどう思う?」

聞けば、その方は管理職で、技術士の資格も持っていて、社内でもたくさんの案件をバリバリと回しているエース級の人だそうです。本人も「自分なら独立してもやれる」と自信を持っている様子でした。

ところが仕事の進め方を詳しく聞いてみると、上流の計画はできるものの、設計計算や図面の作成といった実務作業は、すべて下請けの協力会社に丸投げしていたんです。自分では計算書を組んだりCADで図面を引いたりしていませんでした。

その話を聞いたとき、相談してきた仲間と僕の意見は完全に一致しました。

「その状態で独立しても、利益がほとんど残らなくてかなり厳しいんじゃないか」

独立して元請けから業務を引き受けたとしても、計算や図面を自分で引けないなら、外注先にお金を払って外に出さざるを得ません。そうすると売上は立っても手元に残る利益はカツカツになってしまい、一人で年商2,000万円規模を稼ぐのは現実的に難しくなってしまいます。

会社員時代にたくさんの案件をこなしていると、「自分にはこれだけの仕事が回せる実力がある」と錯覚してしまいがちです。でも、外注を使って案件をコントロールする能力と、独立して自分の腕一本で成果品を納品する能力は、まったく別のものです。

独立後の年商感覚と、橋1本のリアルな内訳

独立したあとの売上と生活レベルの感覚について、僕自身の経験から目安をお伝えしておきます。

まず、年商1,000万円未満でも生活自体は成り立ちます。ただ、手元の余裕はかなり少ないと思っておいた方がいいです。たとえば年商900万円の場合、そこから経費や税金、国民健康保険などを引いていくと、手取りの生活実感としては会社員時代の年収500万円前後とあまり変わりません。その上、来年も同じ仕事がある保証はないので、精神的なゆとりは持ちにくいのが現実です。

もし会社員時代に年収700万円ほどもらっていた人が、独立後も同じような生活水準を維持したいのであれば、年商1,200万〜1,500万円あたりがひとつの目安になります。このラインを超えてくると、税金や保険料を払っても手元にお金が残り、仕事が少し途切れても慌てずに済むようになります。

そして年商2,000万円を超えてくると、無理な条件の仕事を断れるようになり、働く時間や休みの融通も含めて「独立して本当によかったな」と実感しやすくなります。僕の周りを見渡しても、実力のある一人下請けはだいたい年商2,000万〜3,000万円、忙しく働いている人で4,000万円くらいまで行っています。逆に腕が伴っていない人は、年商1,000万円前後で頭打ちになってしまう印象です。

昨年請けた橋梁詳細設計の内訳(約440万円)

では、具体的にどれくらいの仕事をこなせば年商1,000万円に届くのか、イメージが湧きやすいように僕が昨年請けた橋梁詳細設計の内訳をざっくりご紹介します。

案件としては、橋長20mほどの単径間の橋で、下部工は逆T式橋台2基の杭基礎です。構造図や配筋図の作成、数量計算、設計計算書、照査報告書、打合せ資料まで、元請けの担当者と二人三脚で一式対応しました。

内訳の感覚としては、上部工の詳細設計が約40万円、下部工が逆T式橋台2基で約140万円(1基あたり約70万円)、基礎工が2基で約80万円(1基あたり約40万円)でした。そこに現地踏査、取付道路や護岸、旧橋の撤去設計、施工計画、打合せ資料や報告書のとりまとめを加えて、直接費の合計が約340万円。諸経費を含めた全体の受注額として、約440万円をお客さんに了承していただきました。

橋梁詳細設計の見積例。固有情報はマスキングしてある

もちろん、図面修正や計算の一部だけを手伝うスポット作業であれば、数十万円単位の案件もたくさんあります。ですが、このように一式を丸ごと請け負える実務力があれば、年に2本から3本しっかり納めるだけで年商1,000万円の壁はあっさり超えていけます。

僕が普段メインでやっている補修設計の図面についても、現場の実例をブログで解説していますので、気になる方は覗いてみてください。

関連記事:床版下面のひび割れ、0.2mmだからといって注入しなくていい理由

会社員のときと独立後で、求められる分野が変わった

もうひとつ現場のリアルをお話しすると、僕は会社員時代、橋の新設設計ばかりをやっていて、補修設計の経験は2〜3本しかありませんでした。

ところが独立してみると、新設橋の設計なんて年に1本あるかないかで、舞い込んでくる依頼のほとんどが「橋梁補修」だったんです。最初は焦りましたが、過去の設計報告書を取り寄せて勉強したり、分からないところはお客さんに正直に教えてもらいながら、実務を通じて知識を身につけていきました。

いま公共事業で予算が多くついているのは、新設よりも点検や補修、長寿命化といった維持管理の分野です。新設の設計だけにこだわってしまうと独立後の間口が極端に狭くなってしまうので、市場がどこにお金を払っているのかを敏感に察知しておくことも欠かせません。

38歳で独立した僕が、営業ゼロで10年続いている理由

僕が独立を決意した最大の理由は、とにかく「時間」がなかったからです。

会社員時代は朝早くから夜遅くまでの残業が当たり前で、早く帰れても19時、ひどいときは21時や22時を回るのが日常茶飯事でした。深夜残業や徹夜をすることも珍しくなく、土曜日も出勤することが多かったです。有給休暇も取りづらい空気で、家では共働きの妻に家事や育児の負担が偏り、家庭内もぎくしゃくしていました。

さらに、子どもとしっかり向き合いたい家族の事情も重なり、「このまま定年まで会社の都合に振り回される人生でいいのだろうか」と本気で悩むようになったんです。

とはいえ、独立に対する恐怖もありました。元請け時代、下請けの一人社長が安く買い叩かれてボロボロになりながら働いている姿を見ていたので、「独立なんて惨めなだけじゃないか」と思っていた時期もありました。

そんな僕が38歳で思い切って独立し、現在まで10年間やってこられたのは、派手な営業活動をしたからではありません。

実は独立した直後、不安のあまり知り合いの紹介で元請けコンサルを5〜6社ほど営業して回ったことがあります。でも、そこで声をかけてくれたのはたったの1社だけで、しかも相場より安く引き受けてしまった結果、夜中までメールや修正指示が飛んでくる過去最悪の地雷案件になってしまいました。

それ以来、僕は飛び込み営業を一切やめました。コンサルの世界は本当に狭いので、見ず知らずの人が営業に来ても「この人は本当に腕があるのか?」と警戒されるだけです。

その代わり、会社員時代に一緒に仕事をしてきた仲間や、出入りの商社の方に「独立しました」と丁寧に連絡を入れました。僕の実務力や仕事ぶりをすでに知ってくれている人たちです。すると、「ちょうど人手が足りなくて困っていたんだ」「この案件、ガブさんにお願いできないか」と、向こうから次々に声をかけてくれるようになりました。

「できることと、できないことを正直に伝える」「約束した納期と品質は絶対に守る」。当たり前のことを愚直に続けてきた結果、口コミとリピートだけで10年間、仕事が途切れることなく続いています。

関連記事:建設コンサルで営業をせず10年以上仕事が続いた理由

関連記事:建設コンサルが営業より先に作るべき「信用」の積み上げ方

二人社長の失敗と、年商3,000万円・固定費ゼロの経営

技術的な話とは別に、独立するときに「誰と始めるか」という経営の判断でも僕は手痛い失敗をしています。

最初は一人でやる勇気が出ず、同じ時期に独立を考えていた会社の先輩と意気投合して「二人社長」という形で会社を立ち上げました。ですが、売上の大部分を僕が稼いでいるのに報酬は折半で、相手の顔色をうかがいながら働く毎日は、サラリーマン時代よりも不自由でした。結局、1年半ほどで関係が決裂し、会社の口座にお金を残したまま身一つで抜け出すことになったんです。

このあたりの生々しい話は経営の領域に入ってしまうので、ここでは深く触れません。続きは、記事の最後にある案内の先で話しています。

役員報酬を700万弱で固定している理由

一人で会社を作り直してからは、年商3,000万円のペースを維持しています。

ここでよく「年商3,000万円なら、年収も2,000万円くらいあるんですか?」と聞かれるのですが、僕の役員報酬は700万円弱で、ここ8年間ほとんど動かしていません。

会社員時代の年収とあまり変わらないように見えるかもしれませんが、これは稼げていないからではなく、個人にかかる税金や社会保険料を低く抑えるために、あえて給料の枠をここでコントロールしているからです。

売上のうち自分の給料として受け取るのは約2割で、残りの2〜3割は会社の純利益として手元にしっかり蓄積しています。その結果、一人で再スタートを切ってからの9年間で、会社の純資産は約9倍にまで積み上がりました。見かけの年収を派手に吊り上げるよりも、会社にお金を残して財務基盤をカチカチに固める方が、一人社長としてはるかに安心で自由です。

年商3000万円台の決算書。社名は黒塗り

事務所も固定費もいらない

もうひとつ、長く安定して続けるための秘訣は「固定費を極限まで下げること」です。

二人社長で始めたときは、公庫から700万円を借り入れ、立派な事務所を借り、事務員を雇い、大きな印刷機をリースするなど「会社らしさ」にお金をかけていました。でも、一人で再スタートしたときは、自宅の空き部屋にパソコンとモニターを置き、20万円ほどの設立費用だけで始めました。

外に事務所は構えていませんし、従業員も雇っていません。毎月出ていく固定費は月数万円の自宅家賃按分くらいです。仕事が多いときは外注の技術者仲間に手伝ってもらいますが、それも案件ごとの変動費なので、仕事がない時期に会社を圧迫することはありません。

関連記事:建設コンサルの一人社長、社員は雇うべき?雇わない4つの理由

固定費がほとんどかからないからこそ、売上を無理に追う必要がなく、家族との時間や長期の旅行を一番に優先できるライフスタイルが成り立っています。

二人で始めたときと、一人でやり直したときの始め方の比較

独立してうまくいかなかった人の共通点と、技術者のセーフティネット

これまで何人もの独立技術者を見てきましたが、残念ながら1〜2年で会社員に戻っていった人たちもいます。彼らに共通していたのは、「技術力不足」と「約束を守れないこと」でした。

以前、ある下請け技術者に仕事を依頼した元請けから、「納期の1ヶ月前になって、突然『やっぱりこの仕事は無理だからなかったことにしてくれ』と連絡が来て連絡が取れなくなった」という話を聞いたことがあります。当然ですが、そんな無責任な対応をしてしまえば、狭い業界内ですぐに悪評が広まり、二度と誰からも声がかからなくなります。

また、元請けから「別の下請けから上がってきた成果品が真っ赤っかで使い物にならないから手直ししてほしい」と泣きつかれたこともありました。実際に見てみると、図面も数量も基礎的な計算すら合っておらず、結局僕が1週間ほどかけて一から手直しすることになりました。人柄がどれだけ良くても、納品物の品質が伴っていなければ1回きりで取引は終了してしまいます。

ダメなら戻れる。ただし技術があることが大前提

「もし独立して失敗したらどうするんですか?」と聞かれることもよくあります。

僕自身は、もし立ち行かなくなったらサラリーマンに戻ればいいや、と気楽に考えていました。いまの建設コンサル業界は、腕のある技術者が本当に不足しています。ある程度の設計を一人で完結できる実務力があるなら、雇ってくれる会社はいくらでも見つかるからです。

だからこそ、独立は人生のすべてを賭けた一発勝負ではありません。

ただし、それは「一人で成果品をまとめられる技術力があること」が絶対条件です。会社の看板や外注の力に頼り切ったまま外に出てしまえば、戻ることも進むこともできなくなってしまいます。

関連記事:僕が、独立を勧めない人

関連記事:「地元に戻りたい」55歳の技術者から受けた、2時間の相談


まとめ:技術士の独立は、資格の数より「自分で完結できる腕」と「身軽さ」

技術士として独立して10年、僕が実感している大切なポイントは次の3つです。

  1. 資格だけで仕事は来ない。 計画だけでなく、計算書を組み、CADで図面を引き、成果品として一人で完結できる実務力があるかどうかがすべて。
  2. 固定費を極限まで低くして身軽に始める。 事務所や社員などの固定費を持たなければ、売上の波に怯えることなく自由な時間を守り続けられる。
  3. 不安だからといって誰かと組まない。 自分の裁量で時間とお金をコントロールしてこそ、本当の独立の旨味が手に入る。

平凡な会社員だった僕でも、正しい準備をしてポジションを変えたことで、会社員時代の何倍もの自由な時間と安定した収入を手に入れることができました。

ただ、あなたが今すぐ独立すべきかどうかは、持っているスキルや家庭環境によってまったく違います。年商1,000万円を稼ぐための実務力がまだ足りないと感じるなら、いまは会社員として経験を積むべき時期かもしれません。

独立するかどうかは、まだ決めなくていい

この小冊子を読むと、会社員のいまの自分が「独立できる側にいるかどうか」を客観的に判断できるようになります。

独立適性を確かめる10問の診断チェックシートや、元請けから応援されながら円満に会社を辞めるための具体的な伝え方。そして、僕が独立を決意した夜の話や、営業ゼロでも初年度から仕事が舞い込んできたリアルな積み上がり方まで、包み隠さずまとめました。

まずはご自身の現在地を確かめるつもりで、気軽に受け取ってみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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