こんにちは、ガブです。
独立したら、手取りは会社員のころより増える。そう思って、独立を考えている人は多いと思います。
実際に、増える人はいます。でも、独立して何年たっても、手取りが会社員のころと変わらない人もいます。
独立して10年になります。自宅で設計をしていて、仕事は元の会社からの下請けで回っています。営業しなくても仕事はあるのに、手取りはずっと月20〜25万円なんです……。
仕事はちゃんとあるのに、10年たっても手元に残らない。それは、しんどいですよね。毎月の数字を見るたびに、「自分の何がいけないんだろう」と考えてしまうと思います。
この記事を読み終えるころには、「自分の腕が足りないのでは」と探すのをやめて、自分の値付けと仕事の回し方に目を向けられるようになるはずです。
まずは、僕のまわりにいる、ある同業者たちの話からさせてください。
腕は悪くないはずなのに、なぜ手取りが増えないの?
腕がいいのに、手取りが少ない仲間たち
同業の仲間を見ていると、腕はめちゃくちゃいいのに、手取りが少ない人が結構います。
図面もきれいで、計算も確か。元請けからの評判もいい。仕事が途切れているわけでもありません。それなのに、話を聞くと、驚くほど稼いでいないんです。
腕だけで比べたら、僕より上かもしれない人もいます。それなのに、なぜ手元に残らないのか。
その理由に僕が気づけたのは、自分も独立したばかりのころ、同じところでつまずいていたからです。
最初は安く受けて、あとで上げればいいよね?
相場の3〜4割引きで受けた、最初の仕事
独立1年目の僕は、とにかく早く受注したくて仕方がありませんでした。多少安くても、まず仕事を取りたい。金額より、実績がほしい。独立した直後は、みんなそう思うはずです。
それで僕は、最初の仕事を、相場より3〜4割ほど安い金額で受けました。
安く受けると、何が起きるか。自分の中に、なぜか申し訳ない気持ちが生まれるんです。それで、追加料金なしで、頼まれてもいないことまでやってしまいました。
結果、今の僕なら1か月で終わる仕事に、3か月かかりました。時間で割ったら、とんでもなく安い金額です。ほとんど、ただ働きでした。
足りなかったのは、腕ではなかった
あの3か月、僕の腕が足りなかったわけではありません。損をしていたのは、値段の付け方と、仕事の回し方でした。
冒頭の、腕がいいのに手取りが少ない仲間たちも同じです。話を聞いていると、原因はだいたい2つ。単価が安すぎるか、時間をかけすぎているかです。
ここから、手取りが増えない理由を4つ、順に書いていきます。
理由①:最初の単価が、そのままずっと続く
あの1本で、もっと困ったのはそのあとです。一度安く受けると、値上げは本当に難しくなります。
最初に100万円で受けた業務と同じような仕事を、2回目に200万円で出したら、相手は「なんでそんなに上げるの?」と思いますよね。最初に出した単価は、その後のお付き合いの中で、ずっと基準として残ります。
「最初は安くして、あとで上げればいい」は、実際にはほとんど通りません。最初の1本の見積もりは、その相手との値段の土台そのものです。
あのとき安く受けたのは、自分の腕にいくらの値打ちがあるのか、自信がなかったからです。値打ちのある技術者には、会社員のうちから現れる「前兆」があります。無料の小冊子にまとめました。
早く終わらせるほど、損をしている気がするのはなぜ?
理由②:時間で値付けしている
仲間たちのもうひとつの原因、「時間をかけすぎている」も、じつは値付けの話です。
見積もりを作るとき、「この仕事は何時間かかるか」から金額を出していませんか。
時間で値付けしていると、おかしなことが起きます。仕事に慣れて早く終わるようになるほど、受け取る金額が減っていくんです。10時間かかっていた仕事が3時間で終わるようになったら、時間で計算した金額は3分の1以下になります。腕が上がるほど、収入が下がる。逆転です。
僕の場合、橋梁補修の設計はもう300橋近く手がけてきました。図面のストックが増えて、使い回せるパターンも増えたので、同じ仕事でもどんどん早く終わるようになっています。平均的な1橋100万円ほどの補修設計なら、だいたい10日で終わる内容です。
それでも、見積もりの単価は下げていません。早く終わった分は、そのまま自分の技術料です。だから、やればやるほど利益率が上がっていきます。
値段は、かけた時間ではなく、成果物に付ける。実際の見積書で、何にいくら付けているかは単価の記事に書きました。
関連記事:技術士の外注単価は時給5,000円?見積書7枚で見る単価の決め方


外注を増やせば、もっと稼げるのでは?
年商が初めて4,000万円を超えた年
独立して何年かたったころ、年商が初めて4,000万円を超えた年があります。仕事が多すぎて、自分一人ではとても回らず、外注をたくさん使いました。
ところが、忙しい時期ほど、いい外注先はすぐに埋まってしまいます。頼みたいところは全部手いっぱいで、やむを得ず、初めての外注先にお願いしました。
そこからが大変でした。「これはこうでいいですか」「ここはどうすればいいですか」と、質問がとにかく多い。そのたびに回答や資料を作りました。指示を出すくらいなら、自分でやったほうが早い。そう思うほどでした。しかも、上がってきた成果品の質が低く、結局は自分で直すことになりました。
時間がなくなって、ますます忙しくなる。その年、僕は首のヘルニアになり、腱鞘炎と肘も痛めました。
年度が終わって数字を見ると、外注費は700万円近くになっていました。それを引くと、手元に残ったお金は、年商3,000万円前後の年とほとんど変わりません。
あれほど忙しかったのに、大して残らなかった。「そこまでして、何のために独立したんだろう」と思いました。その年のことは、独立10年の記事にも書いています。
関連記事:技術士が独立して10年、その後の仕事と生活|一番の収穫は「時間」
理由③:図面も計算も、外に出しすぎている
売上は、外注を増やせば増やせます。でも、手取りは増えません。外注に払った分は、そのまま出ていくからです。
たとえば、400万円の業務を受けて、計算と図面を外注に出し、200万円払ったとします。自分の会社に残るのは200万円です。この形で、自分の会社に2,000万円を残そうとすると、業務が10本必要になります。一人で、しかも外注の管理をしながら10本です。現実的ではありません。


会社員のうちにやってよかったと心から思うのは、図面を描く、設計計画を立てる、計算をする、と、業務を自分の力で最後まで仕上げられるようになっていたことです。これがあるから、どんな業務が来ても一人で完結でき、取り分が外に流れません。
この「業務を1本、最初から最後まで一人で回せる腕」が、独立したときに仕事が来るかどうかにも、そのままつながります。
関連記事:建設部門の技術士が独立して仕事を取る3つのルート|営業は1回だけ
人を雇って売上を伸ばす形が合わない理由は、こちらにも書きました。
関連記事:一人会社の建設コンサルは年商1億円を目指すべきか?利益と自由の考え方
関連記事:建設コンサルの一人社長、社員は雇うべき?雇わない4つの理由
毎月仕事はあるのに、なぜか余裕がないのは?
理由④:年商1,000万円を切っている
安く受けて、時間をかけて、外にも出す。①〜③が重なると、行き着くのがここです。
年商1,000万円を切ると、生活はできても、手元の余裕はかなり少なくなります。
たとえば年商900万円だと、社会保険料や税金、経費を払ったあとの手取りの感覚は、だいたい年収500万円前後です。会社員の年収500万円と、ほぼ同じくらいです。
しかも独立すると、来年も同じだけ稼げる保証はありません。会社にお金が残らないので、翌年に仕事が少し減ると、すぐに苦しくなります。お金の余裕がなくなると、気持ちの余裕もなくなります。
僕の感覚では、年商1,200万〜1,500万円あたりから、ようやく変わってきます。会社員で年収700万円だった人が、同じくらいの生活をしながら、時間の自由も手に入れられるラインです。年商ごとの生活の感覚は、年商3,000万円の記事にくわしく書いています。


会社員を続けたほうが、まだ稼げるのでは?
4つの理由を読んで、「それなら、会社員を続けたほうがまだ稼げるのでは」と思った人もいるかもしれません。ここで少し、昔の僕のお金の話をさせてください。
技術士を3つ取っても、会社員の年収は700万円だった
29歳で最初の技術士を取ったあと、30歳のときの年収は約500万円でした。会社員なので、残業も多かったです。34歳で技術士を2つ追加して、3つになったころには約600万円。独立する直前、38歳のときで約700万円ほどでした。
資格を3つ取って、10年近くかけて上がったのは200万円ほどです。では、その給料は、自分が回していた仕事の額と比べるとどれくらいだったのか。
昔の僕も、売上の1割で働いていた
会社員のころ、僕は建設コンサルで年間約6,000万円の業務を回していました。もらっていた給料は、600万〜700万円ほどです。
つまり、自分が生み出した売上のうち、給料として受け取っていたのは、だいたい1割です。
これは、会社が悪いわけではありません。会社の売上からは、会社の利益や管理費、間接費が引かれていきます。社員の給料は、その最後に払われます。どれだけ優秀でも、会社員という仕組みの中では、収入は大きく伸びません。能力の問題ではなく、構造の問題です。
独立1年目は2,500万円(純利益約800万円)だった
38歳で独立した1年目の売上は、2,500万円でした。経費をすべて引いた純利益は、約800万円です(金額はすべて税抜です)。
「独立して年収500万〜600万円稼げる人なんて、ごく一部では?」と聞かれることがあります。僕は、そうは思いません。それくらいの見込みが立たなければ、そもそも独立しないからです。
僕の知っている同業者にも、会社員時代の年収は僕と同じく500万〜600万円ほどだったのに、独立して1〜2年で家のローンを一括で返した人がいます。ほかの知り合いの同業者も、だいたい同じような感じです。もちろん、うまくいかなかった人もいます。
「年商」と「手取り」は別もの
よく引用される数字に、「独立技術士の7割は、年間の売上が100万円以下」という調査があります(日本技術士会 千葉県支部、平成25年の調査)。この数字のウラ側は、年商3,000万円の記事に書きました。
関連記事:技術士で独立して年商3000万円|10年続けた現実
ここで気をつけたいのは、売上(年商)と手取りは、まったく別ものだということです。独立すると、社会保険料も税金も経費も、自分の給料も、全部自分の会社から払います。売上がそのまま自分のお金になるわけではありません。


昔の僕も、売上の1割で働いていた、ふつうの会社員でした。独立1年目には2,500万円を売り上げました。それでも最初の1本では、相場の3〜4割引きで受けて、手取りを自分の手で削っていたんです。
4つの理由は、どれも腕の問題ではありません。だから、直せます。
とはいえ、「じゃあ単価を上げればいいのか。でも……」と思った方もいるかもしれません。
単価を上げたら、仕事が来なくなるのでは?
でも、単価を上げたら、仕事が来なくなりませんか?
その怖さは、よく分かります。独立したばかりのころの僕も、見積もりを出すたびに、同じことを考えていました。
「あの人の見積もりは、ちょっと高いんですよね」
僕と仲のいい同業の下請けさんに、僕と同じか、それ以上の技術力を持った人がいます。
ある元請けの担当者から、「あの人の見積もりは、ちょっと高いんですよね」と聞いたことがあります。実際にその人の見積もりを見せてもらうと、たしかに僕より単価を高く出していました。
それでもその人は、その元請けのお得意さんで、仕事を非常に多くもらっています。
元請けが見ているのは、安さよりも「この人に任せれば安心か」です。外注を出す側にいたころの僕も、同じでした。
技術力があれば、高くても仕事は取れます。冒頭の「手取り月20〜25万円」の方も、たぶん、単価を下げすぎているのだと思います。
手取りを増やすために、やること3つ
4つの理由を裏返すと、やることは3つです。
- 値段は、時間ではなく成果物に付ける
- 業務を1本、最初から最後まで自分で回せるようにする
- 追加が出たら精算すること、やらないことを、見積もりの段階で伝えておく
具体的にどう金額を決め、どう相手と話すのか。そこは、相手の状況や関係によって変わるところなので、この記事では書いていません。
法人化は、手取りを考えるうえで一度は検討する
もうひとつ。僕は独立したときから株式会社です。税理士には「年商1,000万円を超えたら、法人の方が税制上有利」と言われました。
ただ、法人化の目安は人によって違います。一般的には、売上よりも利益(所得)で考えて、所得が800万円前後を超えたあたりから法人が有利になりやすいと言われます。社会保険料や役員報酬の決め方で結果が大きく変わるので、最終的には税理士に試算してもらうのが確実です。会社の作り方や手続きは、別の記事でくわしく書きます。
関連記事:技術士の独立に必要な手続きは?一人社長が株式会社を作った順番
会社員のうちに、独立後の手取りは見えるの?
今回している業務の額が、独立後の目安になる
独立したあとの年商は、会社員のうちから、ある程度は見えます。手がかりは、今あなたが元請けで回している業務の額です。そこから独立後の年商をざっくり見込む考え方は、年商3,000万円の記事の「外注枠」の節に書きました。
僕が嫁に独立を話したときも、説明したのはこの数字でした。その夜のことは、こちらに書いています。
関連記事:「会社辞めて独立するわ」と打ち明けた夜。妻の予想外すぎる一言
資格を取ってすぐ、年収300万円でいいなら?
「資格を取ってすぐ独立するのは無謀?年収300万円くらいでいいなら、いける?」と聞かれることもあります。
条件は、資格や年収の目標ではありません。業務を1本、最初から最後まで一人で回せること。そして、仕事を回してくれる人とのつながりがあること。この2つがそろっていれば、資格を取ったばかりかどうかは関係ありません。
外の仕事を一度受けてみると、自分の単価が分かる
会社員のうちに、副業や在宅CADで、会社の外の仕事を受けてみるのもひとつの手です。自分の仕事に、外ではいくらの値段が付くのか。その感覚が、独立する前につかめます。
ただし、副業してよいかは、勤務先の就業規則しだいです。国(厚労省)は副業を原則として認める方向ですが、届出や許可が必要な会社も多く、同業での副業は「競業」に当たりやすいので、とくに注意してください。副業と在宅CADの話は、別の記事でくわしく書きます。
関連記事:技術士の副業・在宅CAD、発注する側から見た現実と単価
まとめ:手取りを決めるのは、腕より「値付け」と「回し方」
建設部門の技術士として独立して10年ほど。手取りについて、僕が分かったことはこの3つです。
- 独立1年目は2,500万円(純利益約800万円)。会社員のころの僕は、自分が生み出した売上の1割で働いていました
- 手取りが増えない理由は4つ:最初の単価がずっと続く/時間で値付けしている/図面も計算も外に出しすぎている/その結果、年商1,000万円を切っている
- 増やすには:成果物で値付けする/1本を自分で回す/追加は精算と、最初に決めておく
腕がいいのに手取りが少ない人は、腕ではなく、値付けと回し方で損をしています。裏を返せば、そこを直すだけで手取りは変わります。
今すぐ独立しなくても大丈夫です。まずは、今の職場で自分がいくらの仕事を回しているのか。それを数えてみてください。
その数字は、独立したらあなたの売上になるかもしれない
自分の仕事にどれだけの値打ちがあるのか。会社員のうちに確かめられるサインを、無料の小冊子『独立前兆』にまとめました。今の立ち位置がわかる「10問の独立診断チェック」も入っています。
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※本記事は2026年10月時点の、僕個人の経験にもとづいています。金額はすべて税抜です。税金や法人化、副業の可否の判断は、税理士や勤務先の規則をご確認ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。








