ガブリエル・やんちゃボーイである。
主人が最近、「自由になった」とよく言っている。
どうやら独立したらしい。
人間界のことはよく分からないが、会社という組織から離れ、自分で仕事をするようになったそうだ。
だから最近は家にいる。
やたらと家にいる。
昔は違った。
朝、まだ俺が眠い時間に起きる。
バタバタと準備をする。
そして大量のカリカリを置いて出ていく。
俺は思っていた。
「いや、今は食べない。」
「昼になったら食べたい。」
「できれば新しいのがいい。」
しかし主人には主人の事情があったらしい。
会社というところに行かなければならなかったのだ。
毎日。
雨の日も。
風の日も。
眠そうな日も。
俺には理解できなかった。
なぜ人間は、自分の家をこんなに長時間留守にするのだろう。
猫なら考えられない。
夕方になる。
ようやく主人が帰ってくる。
疲れた顔をしている。
俺は出迎える。
キャキャキャキャ。
すると主人は笑う。
そして俺を撫でる。
本当はもっと早く帰ってきてほしいのだが、まあ仕方がない。
人間には色々あるらしい。
それから何年か経った。
ある日、主人が会社を辞めた。
俺は知らなかった。
だが様子がおかしかった。
家にいる時間が増えた。
何かをずっと考えている。
パソコンに向かっている。
たまに頭を抱えている。
売上とかいうものを気にしているらしい。
俺は思った。
「会社というものを辞めると、人間は難しい顔になるのだな。」
しかし少しずつ変化が起きた。
昼間に俺を撫でるようになった。
水をこまめに替えるようになった。
窓際で一緒に昼寝をすることも増えた。
俺がキャキャキャキャと鳴くと、
「どうした、ガブ?」
と返事をする。
悪くない。
実に悪くない。
最近、主人は言う。
「独立して自由になった。」
自由。
人間が好きな言葉だ。
だが俺には少し違って見える。
主人は自由になったから幸せなのではない。
自由になったことで、
大切なものに時間を使えるようになったのだ。
家族。
仲間。
旅。
そして猫。
もちろん、俺から見れば
「自由な人生を手に入れた」ではなく、「ようやく俺の給仕係として本来の役割を果たせるようになった」
という解釈になるがな。
だから主人が発信している「独立して人生を自由に生きる」というテーマについては、俺も一定の理解を示している。
なぜなら自由になった結果、一番恩恵を受けたのは猫だからだ。
技術者諸君。
もし君たちが独立を目指すなら覚えておくといい。
自由とは、
好きな場所で働くこと。
好きな時間に働くこと。
だけではない。
猫の水を新鮮な状態で維持できること。
ここに真の自由の本質がある。
俺は猫だから難しいことは分からない。
だが一つだけ知っている。
主人は昔よりよく笑うようになった。
それだけは確かだ。
もし今、
会社に行くため毎朝急いでいる人間がこれを読んでいるなら伝えたい。
独立しろ、とは言わない。
それは人それぞれだ。
だが一度くらい考えてみてもいい。
本当に自分の時間を使いたい相手は誰なのか。
本当に大切にしたいものは何なのか。
それを考えることは、きっと無駄ではない。
ちなみに俺の場合は決まっている。
新鮮な水。
美味しいご飯。
暖かい膝。
そして名前を呼んでくれる主人だ。
キャキャキャキャ。
— ガブリエル・やんちゃボーイ 🐾
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