ガブリエル・やんちゃボーイである。
最近、主人はよく言う。
「会社員時代は大変だった。」
らしい。
だが正直に言うと、俺にはよく分からない。
主人は毎日仕事に行っていた。
朝起きて。
飯を食って。
俺の頭を撫でて。
出かけていく。
それだけだ。
猫から見れば普通である。
ただ、少し気になることはあった。
主人はいつも作業着を着ていた。
ところが時々、スーツを着る日がある。
そういう日は朝から慌ただしい。
鏡を見ている時間も長い。
そして決まって言う。
「ガブ、近づくな。」
意味が分からない。
俺は近づく。
すると主人はため息をつく。
黒い服に俺の毛がたくさん付いている。
そして白いコロコロを取り出して必死に掃除を始める。
失礼な話だ。
俺の毛は高級メインクーン仕様である。
むしろ付いていた方が価値が上がるというのに。
人間というのは、本当に価値基準が分かっていない。
主人は時々、嫁さんとも喧嘩をしていた。
理由は知らない。
仕事だとか。
家事だとか。
育児だとか。
猫には関係のない話である。
ただ一つ、確実に分かることがある。
主人は大抵、負けていた。
それだけは分かる。
喧嘩の後、主人はよく俺を抱っこした。
少し乱暴に。
少し強めに。
俺は知っていた。
これは抱っこではない。
現実逃避である。
(やれやれ、世話が焼ける人間だ)
だから今になって、
主人が会社が嫌だったのかと聞かれても分からない。
嫌だったようには見えなかった。
だが、楽しそうにも見えなかった。
ただいつも、何かに追われていた。
時間だったのか。
仕事だったのか。
責任だったのか。
それは分からない。
今の主人は違う。
相変わらず嫁さんには勝てない。
そこは全く変わらない。
だが、以前より笑う。
以前より旅に行く。
以前より家にいる。
そして以前より、俺を撫でる。
だから俺は思う。
主人は会社が嫌だったのではない。
「自分の人生を自分で決められないこと」が嫌だったのかもしれない。
まあ知らんけど。
俺は猫だからな。
キャキャキャキャ。
— ガブリエル・やんちゃボーイ 🐾
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