技術士の外注単価は時給5,000円?見積書7枚で見る単価の決め方

こんにちは、ガブです。

見積書の金額の欄に数字を入れようとして、手が止まる。どの数字を書いても、間違っている気がする。独立を考えている技術者なら、一度はこの感覚を味わうのではないでしょうか。

読者

技術士の外注単価って、時給5,000円くらいですか? 3,500円と言われたんですが、安すぎますか?

ガブ

その迷い、よく分かります。実は僕、1日で終わる仕事に、値切らずに7万円を払ったことがあります。3社から見積もりを取って、一番安くない会社に頼んだことも。値段だけで見ると、どちらも損な選び方に見えますよね。

この記事では、僕が実際にやり取りした見積書7枚を、社名や橋の名前を伏せて清書し、順番に並べていきます。読み終えるころには、見積もりの金額で迷ったときに立ち戻れる「軸」が1本持てるはずです。

そして、「時給いくらが正解か」を探すのはやめて、「この合計は妥当か」「この人に任せて安心か」で見積もりを見るようになっていると思います。時給3,500円が安いかどうかより、もっと大事なことが見えてきます。


技術士の外注単価、いくらと書けば「正解」なの?

出す側にいたころ、見積書の内訳は見ていなかった

会社員時代、僕は元請けの建設コンサルで、外注先に仕事を出す側にいました。

下請けから見積書が上がってくると、目が行くのは最後の合計の行です。内訳の単価が正しいかどうかは、正直、判断がつきませんでした。単価の欄の数字を眺めても、高いのか安いのか、物差しがなかったんです。

僕の感覚は「日給10万円くらい」

今の年収から換算すると、僕の感覚はだいたい日給10万円くらいです。8時間で割ると、時給は約12,500円になります。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

ただし、時給で請求しているわけではありません。図面1枚、床版1径間といった成果物ごとに値段を付けた見積もりを、あとから日数で割ると、だいたいそれくらいになる、という意味です。その中身は、このあと僕の見積書で見せます。

時給3,500円・5,000円は、どのくらいの位置?

冒頭の質問の金額を、日給・月・年に直してみます。

単価の例時給日給(8時間)月(20日)年(12か月)
質問の「3,500円」3,500円28,000円56万円672万円
質問の「5,000円」5,000円40,000円80万円960万円
僕の目安約12,500円約10万円約200万円約2,400万円
時給から年の売上へ(月20日・12か月で計算した、経費・外注費を引く前の目安)

※「月20日」は計算のための前提です。僕は暦どおりに休み、年に6〜7週間は旅行にも出ているので、実際に働いた日で割ると、日給は10万円を超えます。年商ごとの暮らしの感覚は、年商3,000万円の記事に書きました。

関連記事:技術士で独立して年商3000万円|10年続けた現実

時給3,500円×8時間は28,000円。これは、僕が外注している個人の技術者が出してきた「1人工約3万円」とほぼ同じ水準です。時給5,000円×8時間は40,000円。国の技術者単価(このあと表で見せます)の「技師(A)」に0.7をかけた額(約4.4万円)に近い数字です。

どちらも、おかしな金額ではありません。ただ、時間で売っている限り、日給には天井があります。腕が上がって早く終わるようになるほど、受け取れる額が減ってしまうからです。

書いている人

ガブ|建設コンサルの技術者として独立して10年ほど。専門は、橋の補修設計。仕事はほぼ全部が、元請けの建設コンサルからの外注です。

  • 独立10年、年商3,000万円前後で安定
  • 手がけた橋梁補修は300橋近く
  • 業界歴24年(会社員14年+独立10年)
  • 29歳で国家資格の技術士

では、時給で考えないなら、何を基準に値段を決めればいいのか。

その答えを書く前に、冒頭で少し触れた話をしておきます。数年前、外注先を探して3社から見積もりを取ったとき、僕が頼んだのは、一番安い会社ではありませんでした。払う側に回ったとき、僕は時給の高い安いでは選んでいなかったんです。

なぜ、その会社だったのか。次の章で3通の見積書を並べて、理由をお話しします。

同じ仕事でも、見積もりはどれくらい違う?――合い見積もり3社の単価の出し方

3通の見積書は、形がまるで違った

令和2年度、鋼橋の詳細設計を受けたときのことです。

この業務には、僕の専門ではない鋼橋の上部工が入っていました。そこで、上部工と下部工の設計を外に出そうと、3社から見積もりを取りました。

届いた3通を机に並べて、最初に思ったのは「同じ橋の見積もりなのに、こんなに形が違うのか」でした。値段を付ける単位も、諸経費の率も、そろっているところが一つもありません。どれかが間違っているわけではなく、3社それぞれが、自分の決め方で値段を付けていたんです。

実物の見積書(社名などを黒塗りし、全体をぼかしたもの)
実物の見積書(社名などは黒塗り+ぼかし)。この記事では清書した表で説明します

3社は、任せる範囲が少しずつ違います。なので、合計金額の単純な比較はできません。見てほしいのは、単価の決め方そのものがバラバラだということです。

※令和2年度の見積もりなので、今の国の技術者単価(次の章で表にします。令和2年度→令和8年度で約1.3倍)より低い時期の数字です。

3社を並べると

合い見積の甲社の見積書を清書した表。設計項目ごとの1式、図面の枚数、人工で値段を付け、諸経費は10%
甲社:設計項目ごとの「1式」+図面の枚数+人工
合い見積の乙社の見積書を清書した表。格点・図面の枚数・人工・基数を組み合わせ、諸経費は20%
乙社:格点・図面の枚数・人工・基数の混合
合い見積の丙社の見積書を清書した表。主任技師・技師(A)・技師(C)の区分ごとに人工を積み上げ、諸経費は30%
丙社:技術者の区分ごとの人工
見積書任せた範囲主な単位諸経費率
甲社上部工のみ設計項目ごとの「1式」+図面の枚数+人工10%
乙社上部工+下部工格点・図面の枚数・人工・基数の混合20%
丙社上部工のみ(古い図面を使う前提)技術者の区分ごとの人工30%
3社の単価の決め方(金額の比較ではなく、決め方の比較)

僕が選んだのは、一番安い会社ではなかった

3通を見比べて、僕が頼んだのは乙社です。一番安かったわけではありません。

決め手は、技術力が高く、ミスが少ないことでした。外注した成果品は、最後に僕がチェックします。ミスが多ければ、見つけて直すのは僕です。その時間を取られたら、安い見積もりは、結局安くつきません。

振り返ると、会社員時代に出す側にいたころも、同じでした。内訳の単価が正しいかは分からなくても、「この合計で頼んで妥当か」「社内で通る金額か」は判断していました。独立して受ける側に回った今も、元請けが見ているのはそこです。

単価の決め方に、正解はありません。見られているのは内訳ではなく、「合計が妥当か」と「任せて安心か」の2つです。

では、正解がないなら、独立したての人は何を土台に値を付ければいいのか。

外注単価の土台は、何を見ればいい?――国交省の「設計業務委託等技術者単価」

3通の見積書は、形がまるで違いました。それでも、土台として拠りどころにできる基準があります。国が毎年出している「技術者単価」です。丙社の見積もりに並んでいた「主任技師」「技師(A)」といった技術者の区分も、この基準と同じ呼び名でした。

個人の外注先の見積書に、根拠が書いてあった

最近、橋台の図面と数量を、個人で仕事を受けている技術者にお願いしました。届いた見積書は、こうです。

  • 作図:1枚約3万円(鉄筋加工図は1枚1万円台)
  • 照査・数量:1人工約3万円
  • 諸経費:0%
  • 合計:約70万円
個人の外注先の見積書を清書した表。図面は1枚約3万円、照査・数量は1人工約3万円、合計約70万円
図面は「枚」、考える作業は「人工」で値段を付けている

目を引いたのは、単価の根拠がきちんと書いてあったことです。国の技術者単価をもとに、0.7をかけた「個人で受けるときの単価」で計算している、とありました。ただ、この0.7は決まったルールではありません。単価を考えるときの、ひとつの例として見てください。

1人工約3万円を8時間で割ると、時給は4,000円弱。冒頭の質問の「時給3,500円」と、ほぼ同じ水準です。

もうひとつ、図面は「枚数」、照査や数量のように考える作業は「人工(1人1日)」と、単位を使い分けているのもポイントです。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

令和8年度の技術者単価(日額)

この見積書の土台になっている「設計業務委託等技術者単価」は、発注者が設計業務の費用を積算するときに使う、技術者1人1日あたりの基準額です。毎年、国土交通省が公表しています。

職種日額
主任技術者90,300円
理事・技師長82,800円
主任技師70,900円
技師(A)62,600円
技師(B)49,300円
技師(C)42,500円
技術員36,700円
令和8年度 設計業務委託等技術者単価(日額・令和8年3月から適用)

出典:国土交通省「設計業務委託等技術者単価」/報道発表(令和8年2月17日)

下請けは「×0.7」がよくある目安

下請けが単価を出すとき、この技術者単価に0.7をかけるのは、よくある目安です。

元請けが1日3万円もらえるところを、下請けも同じ3万円で出したら、元請けは困ります。だから0.7をかけて、少し安くする。そういうニュアンスです。類似設計や修正設計では、業務の歩掛に0.7をかけることがあるので、そこから来ているのだと僕は思っています。

国の技術者単価に0.7をかけた1人工の単価。技師(A)は約4.4万円、技師(C)は約3万円
出典:国土交通省 令和8年度 設計業務委託等技術者単価

技師(C)に0.7をかけると約3万円。さっきの個人の外注先の「1人工約3万円」と、ほぼ重なります。

なお、年商3,000万円の記事に書いた「外注枠(元請けが受注額のうち外に出す額の目安)」とは、別の話です。0.7は下請けが自分の単価を出すときの係数、外注枠は元請けが外に出す総額の目安です。

関連記事:技術士で独立して年商3000万円|10年続けた現実

では、受ける側の僕は、この基準をどう使って、自分の見積もりに値を付けているのか。最近の補修設計の見積書を開きます。

慣れた技術者は、どうやって値段を付けている?――床版1径間「だいたい7万円」の中身

最近の補修設計2橋の見積書

最近、元請けに出した、2橋の橋梁補修設計の見積書です。

実物の見積書(社名・橋名などを黒塗りし、全体をぼかしたもの)
実物の見積書(社名・橋名などは黒塗り+ぼかし)

単価は、部位ごとにこう付けています。

  • RC床版:7万円/径間
  • 塗り替え:20万円/径間(主桁の応力度照査込み)
  • 伸縮装置:7万円/箇所
  • 支承:20万〜25万円/支承線
  • 地覆:10万円/径間
  • 下部工:7万円/基
  • 舗装:10万円/橋
  • 施工計画:10万円/橋
  • 資料・条件の整理:10万円/橋

塗り替えの20万円は、この業務では主桁の応力度照査も含めた金額です。塗り替えだけなら、ふだんは1径間10万円ほどです。

直接費は約240万円。そこに諸経費30%をのせて、約310万円(税抜)です。

橋梁補修設計2橋の見積書を清書した表。部位ごとの単価で、直接費約240万円、諸経費30%、見積額約310万円
値段は部位ごとの成果物に付けている

この見積もりで、僕がやるのは図面・数量・設計計算です。協議資料、報告書、概算工事費は含めていません。どこまでやるかを書いておくのも、値付けのうちです。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

床版7万円を分解すると

床版1径間の7万円を、技術者単価から積み上げ直すと、こうなります。

床版1径間の7万円の内訳。図面1人工4万円、数量0.3人工1.2万円、技術的な検討0.5人工2万円

技師(A)の62,600円に0.7をかけると約4.4万円ですが、僕はざっくり1人工4万円で見ています。図面に1人工で4万円、数量に0.3人工で1.2万円、技術的な検討に0.5人工で2万円。合わせて、だいたい7万円です。

僕は細かく積み上げていない。でも最初は積み上げていい

正直に言うと、今の僕は、こうして細かく積み上げてはいません。これまでの経験から「床版1径間なら、だいたい7万円」と値を付けています。

でも、経験が浅いうちは、こうして技術者単価から積み上げて決めていいと思います。積み上げておけば、「なぜこの金額なのか」を自分で説明できます。それが、見積もりを出すときの安心につながります。

1橋の値段は、工種の数で決まる

補修設計の1橋の値段は、その橋に工種がいくつ入るかで決まります。

橋面の防水工だけなら、1橋で約10万円。そこに伸縮装置の補修、断面修復、排水管、塗り替え、支承の取り替えなどが加わると、1橋で100万円を超えることもよくあります。平均すると、1橋100万円前後が多いです。直近1年分の受注表を見返しても、橋1つの補修設計は、70万〜160万円ほどに収まっていました。

1業務の金額は、その中に入っている橋の数で決まります。昔は1業務に5〜6橋入っていることが多かったのですが、最近は1〜2橋が多くなりました。

補修設計の1橋の値段は工種の数で決まる。防水工だけなら約10万円、工種が加わると100万円を超えることも

年商3,000万円の記事に書いた「一式で約440万円の仕事を年に2〜3本」は、新しく橋を架ける詳細設計の話です。ここで書いているのは、僕の本業の補修設計の話です。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

日当にすると、どれくらいか

さっきの2橋の仕事は、正味20〜30日かかる見込みです。

  • 30日かかれば:約310万円÷30日=日当約10万円
  • 20日で終われば:約310万円÷20日=日当約15万円

平均的な1橋100万円の補修設計は、だいたい10日で終わらせる仕事の内容です。1橋100万円を10日で割れば、日給10万円。最初に書いた「日給10万円くらい」の感覚は、ここから来ています。

成果物ごとに値段を付けておけば、早く仕上がるほど、日当は上がります。時給で売っていたら、こうはなりません。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

補修の工種が増えると1橋の値段が上がる、という話をしました。その工種の一つ、断面修復で僕がどう考えているかを書いています。→ 腐食した鉄筋を、そのまま埋めていいのか(断面修復の話)

ここまでは、僕が全部自分でやる補修設計の話でした。では、自分の手に余る部分を外注に出したとき、お金はどう流れて、手元にはいくら残るのか。合い見積もりを取った、あの鋼橋の仕事の「その後」です。

下請けがさらに外注したら、中抜きにならない?――受けた700万円のお金の流れ

見積もりは約730万円、値切られて700万円

合い見積もりを取った、令和2年度の鋼橋の詳細設計です。僕が元請けに出した見積もりは、こうでした。

直接費約560万円に、諸経費30%をのせて、約730万円(税抜)です。内訳の中心は、上部工が約140万円、下部工(橋台)と基礎工が1基あたり60万〜70万円台です。そこに、現地踏査や施工計画、報告書のとりまとめなどが加わります。

鋼橋の詳細設計の見積書を清書した表。直接費約560万円に諸経費30%で、見積額約730万円
見積額は約730万円。値切られて700万円で決着

ここから値切られて、700万円で決着しました。それでも、利益は十分に出ました。

年商3,000万円の記事には、同じ詳細設計の一式で「約440万円」の例を書いています。橋の形式や規模、付帯する設計がどこまで入るか、時期によって、金額は大きく変わります。ただ、直接費に約3割の諸経費をのせている点は同じです。

関連記事:技術士で独立して年商3000万円|10年続けた現実

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

約240万円を外に出し、手元に約460万円

この700万円のうち、乙社に外注したのは約240万円(税抜)です。外に出した範囲と、自分でやった範囲を分けると、こうなります。

乙社に外注した僕がやった
上部工(鋼橋)の計算・図面・数量下部工・基礎工の設計計算
下部工・基礎工の図面・数量橋梁の計画、設計条件のとりまとめ
外注した成果品のチェック
現地踏査、付帯構造物などの設計計算と図面
施工計画、協議資料、報告書、全体のとりまとめ
この仕事の分担

僕が実際に手を動かしたのは、約60日です。

  • 700万円−240万円=約460万円
  • 460万円÷約60日=日当約7.7万円(下部工・基礎工の計算や、外注先とのやり取り・チェックの手間も含む)

日当にすると約7.7万円で、補修設計より低めです。新設の詳細設計は時間がかかるぶん、1日あたりにすると割がよくありません。僕が補修設計を本業にしている理由の一つです。

外に出した割合は、240万円÷700万円で約34%です。これは僕がこの1件でさらに外に出した割合で、さっき触れた年商3,000万円の記事の「外注枠」とは別の話です。

受注700万円のうち約240万円を乙社に外注し、手元に約460万円、日当約7.7万円になったお金の流れ
金額は税抜

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

上部工だけで比べると、差は約20万円

「下請けが、さらに外注して差額を取る。それって中抜きでは?」と思った方もいるかもしれません。数字で見てみます。

上部工だけで比べると、僕の見積もりは直接費約140万円に諸経費30%をのせて約180万円。乙社への外注は、上部工の分が諸経費込みで約160万円です。差は約20万円で、これはほぼ、僕がやった照査と取りまとめの分です。

差が大きいのは、下部工・基礎工のほうです。僕の見積もりでは直接費約270万円(諸経費込みで約350万円)。そのうち乙社に出したのは図面・数量・照査だけで、諸経費込みで約80万円でした。残りは、僕が自分でやった設計計算の分です。

外に出したのは「手を動かす部分」の一部で、考える部分と、決める部分と、チェックする部分は手元に残しています。

図面と数量を外に出すのは、新設の詳細設計だけ

年商3,000万円の記事には「計算と図面を外注に丸投げしている人は、独立しても利益が残らない」と書きました。この仕事と矛盾するように見えるかもしれないので、補足しておきます。

計算と図面は、自分の専門分野なら自分でやります。この仕事には、専門外の鋼橋の上部工が入っていて、専用の設計ソフトも持っていませんでした。だから、そこは得意な外注先に頼みました。苦手なのに自分でやると、ミスが出ます。目医者が、歯医者の仕事をしないのと同じです。

図面と数量を外に出すのは、新しく橋を架ける詳細設計の、上部工・下部工に限った僕のやり方です。自分でやるとかなり時間がかかるので、その時間でほかの仕事をしたほうが、利益率がいいからです。

本業の橋梁補修設計では、図面はほぼすべて自分で描いています(外に出すのは、専門外の部分だけです)。受注表で見ても、ここ3年は、年間の外注費が受注額の1割に届いていません。

「考える部分」まで受けると、単価が変わる

図面と数量は、どの元請けも外に出したい部分です。図面と数量だけを描く下請けは、たくさんいます。でも、計画や設計計算、協議の資料、報告書まで任せられる下請けは、あまりいません。

僕のお客さんの3〜4割は、この「考える部分」までまとめて任せてくれます。そこを引き受けられると、同じ橋でも、受け取れる金額が変わります。

たとえば、20m程度の橋の下部工なら、橋台1基あたり、図面と数量だけで30万〜40万円、計算込みなら70万〜80万円くらいです。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

ここまで、僕が受ける側の値段の話をしてきました。最後に、逆の立場の話をします。僕が払う側に回ったとき、相場より高い外注先にも、値切らずにお金を払っている話です。

高い外注先に、わざわざ頼むのはなぜ?――1日7万円を払った仕事

1日で終わる仕事に、7万円

最近、中間横桁の補修設計を、ある外注先にお願いしました。僕の見立てでは、1日で終わる仕事です。

届いた見積書の合計の欄には、7万円とありました。

  • 検討・計算:1式3万円
  • 図面・数量:1枚3万円
  • 小計6万円に経費20%をのせ、端数を少し値引きした形で7万円(税抜)
1日で終わる補修設計の外注見積を清書した表。検討・計算3万円、図面・数量3万円、経費をのせて少し値引きし7万円
1日で終わる仕事に、7万円

1日で7万円。最初に見た個人の外注先の「1人工約3万円」と並べると、2倍以上です。冒頭の質問のように時給に直せば、9,000円近くになります。

それでも僕は、金額には何も言わず、そのままお願いしました。

※単価は会社によって異なります。あくまで僕の場合の一例です。

頼んだ理由は2つ

1つ目は、技術力が確かなこと。

2つ目は、自分でやったほうが高くつくことです。中間横桁は、僕の苦手な分野です。自分でやれば2日以上、考える時間も入れると3日かかるかもしれません。自分の日当で換算すると、20万〜30万円分です。だから、7万円で頼んだほうが安いんです。

外注先の見積もりは、値切らない

外注先とうまく付き合うコツは、逆の立場で考えることだと思っています。自分が外注を受ける側なら、気持ちよく仕事ができるかどうか。

だから僕は、外注先が出してきた金額を値切らずに、そのまま払います。そのかわり、手戻りが出ないよう、設計条件や資料を分かりやすくまとめて渡します。

外注先がインボイス登録をしていない免税事業者の場合、2026年10月からは、その外注費にかかった消費税の7割しか控除できなくなりました(それまでは8割)。この割合は今後も段階的に下がります。外注先を選ぶときは、インボイス登録の有無も確認しておくと安心です。

※制度は毎年のように見直されるので、最新の内容は国税庁のサイトで確認してください。

高くても頼まれる人がいる

受ける側にも、高くても選ばれる人がいます。

僕と仲のいい同業の下請けさんがいます。技術力は、僕と同じか、それ以上です。あるとき、僕も彼も取引のある元請けの担当者から「あの人の見積もりは、ちょっと高いんだよね」と聞いたことがありました。

実際に彼の見積もりを見せてもらうと、たしかに僕より単価を高く出していました。それでも彼は、その元請けのお得意さんで、仕事を非常に多くもらっています。

漫画の『ブラック・ジャック』を思い出してください。手術の前に、とんでもない金額をふっかける。それでも患者は、頭を下げて頼みに来ます。ほかの誰にも治せない腕があるからです。元請けの担当者が「ちょっと高いんだよね」とこぼしながら、彼に仕事を出し続けているのも、同じことだと思います。

単価を決めているのは、かけた時間ではありません。「この人に任せれば安心だ」と思ってもらえるかどうかです。

元請けが「頼みたくない」と感じる外注先の話は、こちらに書いています。

関連記事:建設部門の技術士が独立して仕事を取る3つのルート|営業は1回だけ

「ちょっと高い」と言われても、仕事が途切れない人がいる。その差は、見積もりを出す前に、ふだんの仕事ぶりでついています。任せて安心だと思われる技術者には、会社員のうちから現れる「前兆」があります。無料の小冊子にまとめました。

「時給3,500円」と言われたら、独立前に何を考えておけばいい?

最初は、僕も単価の正解が分からなかった

ここまで偉そうに書いてきましたが、僕も最初から値付けができたわけではありません。独立した直後には、やったことのない橋脚の補修に高めの単価を付けて「ちょっと高くない?」と言われ、素直に相場を聞いて出し直したこともあります(その話は、こちらに書きました)。

関連記事:建設部門の技術士が独立して仕事を取る3つのルート|営業は1回だけ

最初は、単価の正解が分からず苦労しました。適正な価格は、実績を重ねるうちに、少しずつ見つけていったものです。

今は、見積もりは正解を当てるゲームではなく、相手と合意をつくる作業だと考えています。

まずは技術者単価×0.7から積み上げてみる

相場が分からないうちは、国の技術者単価に0.7をかけた人工単価を土台にして、床版7万円の例のように積み上げてみてください。慣れてきたら、経験で「だいたいこれくらい」と決めていけば十分です。

時間ではなく、成果物で値段を付ける

図面1枚、床版1径間、1橋。値段は、成果物に付けます。時間で値段を付けると、腕が上がって早く終わるほど、受け取れる額が減ってしまいます。成果物に付けておけば、早く終わるほど日当は上がります。

相場は、知っている人に聞いていい

分からないまま一人で抱え込むより、知っている人に聞いたほうが早い。橋脚の見積もりで、僕はそれを学びました。独立して一人になると、何でも自分で判断しなければなりません。分からないことを抱え続けるほうが、よっぽど危険です。

安くしすぎた単価は、あとで自分を苦しめる

技術士法の第56条には、「技術士の業務に対する報酬は、公正かつ妥当なものでなければならない」とあります。高すぎても、安すぎても、妥当とは言えません。自分の仕事に見合った値段を付けることも技術者の仕事のうちだ、と僕は読んでいます(あくまで僕の解釈です)。

独立して何年たっても手取りが増えない、という相談をもらうことがあります。話を聞いていて思うのは、その人はたぶん、単価を下げすぎているということです。最初に出した単価は、その後の基準になりやすいからです。

「考える部分」まで受けられるかで、単価は変わる

700万円の仕事で見たとおり、計画や計算、取りまとめまで引き受けられると、同じ橋でも受け取れる金額が変わります。会社員のうちに、業務を最初から最後まで一人で回せる腕をつけておくこと。その大切さは、年商3,000万円の記事のまとめに書きました。

関連記事:技術士で独立して年商3000万円|10年続けた現実

図面だけの仕事の単価や、在宅CADの請求の相場は、別の記事で書きます。


まとめ:単価は「時給」より「合計の妥当さ」と「信用」で決まる

見積書7枚を見てきました。単価の決め方を振り返ると、こうなります。

  1. 単価の決め方に正解はない。元請けが見ているのは内訳ではなく、合計が妥当かどうか
  2. 土台は国の技術者単価。下請けは×0.7がよくある目安。最初は積み上げ、慣れたら経験で決めていい
  3. 単価を上げるのは、時間ではなく「任せて安心」と思われること

僕は橋梁補修を300橋近く手がけてきて、自分で描いた図面のストックも増えました。同じ仕事が、昔より早く終わります。それでも、見積もりの単価は下げていません。だから、経験を積むほど利益率が上がっていきます。独立したばかりで図面のストックがない人は、まず自分の描いた図面を整理しておくといいですよ。

関連記事:一人会社の建設コンサルは年商1億円を目指すべきか?利益と自由の考え方

※単価は会社によって異なります。この記事の金額は、あくまで僕の場合の一例です。

時給3,500円が安いかどうかより、その金額で、あなたにしか頼めない仕事をしているかどうか。僕はそっちのほうが大事だと思っています。

値段を決める前に、「頼まれる側」に立てているか

見積もりに自信が持てるのは、仕事を任せてもらえる立場にいるから。僕が独立の前後でやったことを、無料の小冊子『独立前兆』にまとめました。今の立ち位置がわかる「10問の独立診断チェック」も入っています。

関連記事

※本記事は2026年10月時点の制度にもとづく、僕個人の経験と理解です。税金などの個別の判断は、税理士などの専門家にご相談ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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